日本経済新聞 2021年12月21日 4:00配信記事より
事業活動に伴う人権侵害のリスクを洗い出し、問題を未然に防ぐ「人権デューデリジェンス(DD)」が企業にとって必須になってきた。世界的な人権意識の高まりが背景にあるが、サプライチェーン(供給網)はグローバルに張り巡らされているだけに、リスクの把握は容易でない。投資家や消費者らから支持される「人権経営」に向け、企業の試行錯誤が始まった。
人権DDは人権に対する企業の基本的な考え方を明記した人権方針の策定を含む、幅広いプロセスを指す。実務上の核になるのはサプライヤーへのアンケート調査や個別の監査活動、改善指導などだ。
人権への対応はリスクをどれだけ減らすかという「守り」に傾きがちだ。だが企業統治のコンサルイティング会社、HRガバナンス・リーダーズの内ヶ崎茂社長は、企業の成長機会ととらえる必要があると説く。「執行(経営陣)と監督(取締役会)と現場がワンチームになり、サプライチェーンや消費者、株主・投資家、社会を巻き込んでサステナブル(持続可能)な経営をする。それが企業のブランド価値向上につながり、ベースになるのが人権重視」と整理する。
経営陣に求められるのは「企業のパーパス(存在意義)を明確にし、人権への考え方もしっかり発信して、取引先に『この会社と一緒にやっていきたい』と共感してもらうこと」。サプライヤーに対する調査はともすると「上から目線」になるが、「対等なパートナー、仲間であるとの意識が欠かせない」。調査対象を広げればコストがかさむが、「成長のための投資と考えるべきだ」という。
取締役会の任務はまず、「サステナブルな経営に向けた基本方針や戦略をつくること」だ。そして「経営陣が人権に対する企業の姿勢を取引先や消費者に浸透させているかどうかの監督」が挙げられる。「株主や投資家に、サステナブル経営を通じたブランド価値向上の戦略を語る役割も重要になる」
今日は人権デューデリジェンス(DD)に関する話題です。
ESGやSDGsの観点から、最近では自社のコンプライアンスという文脈のみならず、サステナブルな経営という視点でサプライチェーンを含めた人権検証が求められつつあります。また、逆に人権問題に無頓着であると、場合によってはレピュテーションリスクにもなりかねませんので、認識・対処すべきリスクのひとつとして考えるべきです。
しかし、人権DDとは実際何をするのか、また経営陣や取締役会が持つべき視点はまだあまり語られていないように思いますので、上記記事は監査役としても参考になるのではないかと思います。

記事では、人権DDの具体的な手法の紹介の他、経営陣・取締役会が持つべき視点についても触れられています。紹介されている帝人やアサヒHDではNGOなどの第三者を入れた検証を行なっているとのことですが、専門性の高い組織から協力を得ることで、DDの質に寄与しているとのことです。

監査役としては、記事中にある「取締役会の任務」が進められているかを監視することがまず第一歩です。さらにDDを実施した場合はその結果と対応も確認する必要があります。課題の把握状況とその改善状況は、経営課題として継続して追いかけていきたいところです。


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