日本経済新聞 2021年10月14日 16:59配信記事より
山口フィナンシャルグループ(FG)は14日、臨時取締役会で前会長兼グループ最高経営責任者(CEO)の吉村猛取締役に対する辞任勧告を決議した。取締役会に諮らず権限を逸脱して新銀行設立を進めた吉村氏の行動や言動には銀行持ち株会社取締役としての資質がないと判断した。取締役10人のうちただ1人決議に反対した吉村取締役が辞任するか否かは不明だが、同社は年内に臨時株主総会を招集し、付議する議案を月内に決定する。
臨時取締役会は新銀行設立構想の経緯などを調べた社内調査本部の報告書をもとに協議した。報告書は、取締役会の決議を経ることなく消費者金融会社との共同出資による新銀行の中身やトップ人事を決めようとした吉村氏について「CEOの権限を逸脱」と認定。これとは別に取締役会の決議を経ることなく、証券会社との提携を解消しようとしたことも取締役会規則に反するとした。
報告書はトップに情報・権限が集中する同社の構造を問題視。経営トップへの権限の集中を排除すべきだとしてCEO室の廃止や内部統制の強化、インサイダー案件にかかる取り組みプロセスの明確化などを提言した。
報告書を受けて臨時取締役会は、吉村氏の一連の行動や言動が同社の役職員が従うべき理念に反し、取締役会の信頼関係を破綻させたと批判。吉村氏に業務執行の監督という取締役会の職責を果たすことは期待できないとして辞任勧告を決議した。

山口フィナンシャルグループ 社内調査本部による調査報告書と今後の対応方針に関するお知らせ
取締役 1 名に対する辞任勧告の決議について

山口銀行などを擁する山口フィナンシャルグループに関するニュースです。
前CEOが独断で新銀行設立の話を進めてしまっていたとのことですが、各企業には取締役会規程で取締役会で決議されるべき職務権限規程で各会議体や役職の権限が定められていますので、それを逸脱した行為が行われていたようです。
調査報告書を読むと、前CEOは複数の規程逸脱行為があったほかにも、自身が決裁すべき内容を自らは決裁せずに取締役会に上程し混乱を来すなど、数々の問題があったようです。
ここまでの事態となってしまったことについて、報告書では前CEOへの権限の集中が指摘されています。もともと前CEOが独断で色々決めてしまえる状況があり、情報共有が積極的に行われてこなかった結果として、動き自体を取締役会で察知出来なかったことが根本原因として挙げられそうです。

今回は「取締役の辞任勧告」であり、法的な強制力はありませんが、取締役会、ひいては当該企業のスタンスを明確化するためには重要なプロセスだと思われます。今後臨時株主総会が開催されるとのことですが、企業側の重要なメッセージになるのではないでしょうか。